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日々のトレーニングを残していきます。高速構造化思考の修得へ

#062 ワークプランニング~コンサルティングに不可欠な仕事の最適資源配分~

A.T. カーニー Webサイトより

 

短期間で高いアウトプットを出すコアスキル

現在勤めるA.T.カーニーは、私にとって3社目のコンサルティング・ファームである。私が経験した3社で、新入社員を対象に必ず実施していたトレーニングに「ワークプランニング」がある。

コンサルティング・プロジェクトを行っていると、クライアントの方からチームに「これほど短期間でこれだけのアウトプットを出してもらい感謝している」一緒に働いていて、そのスピード感に圧倒される」といったお褒めの言葉を頂戴することが多い。私自身が事業会社で経験したスピード感と比べると、確かにコンサルタントは短期間でインパクトのあるアウトプットを出していると思うが、そこにはワークプランニングによる最適な資源配分が大きく寄与していると考えている。

ワークプランニングとは、文字どおり「ワークプラン」を立てること。つまり、実行すべき業務を、どのような優先順位で、誰がいつまでに実施するかを明文化したものである。ここで言うワークプランは、プロジェクト全体のワークプランから個人レベルの日々のワークプランまで、さまざまなレベルを含んでいる。たとえば、読者の皆さんがマーケティング部門あるいは営業部門に所属していたとしよう。会社には年次の計画・目標があり、それは各部署の年次のマーケティング計画、営業計画に落とし込まれているだろう。それもある意味ワークプランである。

本稿では、コンサルティング・プロジェクトを進める際のワークプランニングの考え方をベースに、読者の皆さんの日々の業務にワークプランニングをどのように生かせるか、今後のキャリアにどのような意味合いがあるか、考えてみたい。
ワークプランの重要性

コンサルティング・ファームがクライアントにプロジェクトを提案するときの内容には、プロジェクト・アプローチとアウトプット、主な論点と仮説、作業内容とスケジュール、チーム体制などが含まれる。プロジェクトのスケジュールやチーム体制を検討する際のポイントとしては、アウトプットを出すために必要な作業にはどのようなものがあり、必要な工数はどの程度か、どのような人員を配置することで求められるアウトプットを出せるか、に集約される。

コンサルティング・ファームとしてベストなチームを組むために、業界とクライアントに対する知見、課題解決に必要な経験・専門知識・スキルの2つの視点から人選、チーム編成が行われ、スケジュールが組まれる。この時点で適切な工数の見積もりがされ、適切なチーム体制が整うことが、プロジェクトのアウトプットの質を担保する上で非常に重要である。プロジェクトの提案書を作成するマネジメントレベルのコンサルタントは、過去の経験に基づいて適切な工数を見積もり、資源配分を行うのである。このときに、経験をベースにするものの、想像力を存分に働かせてプランを考えることがカギになる。個人レベルのワークプランでも同様だが、プロジェクトや作業に取り掛かる前に十分に考えておくことが、その後のアウトプットの質を左右する。個人レベルで見れば、ワークライフバランスを保てるかどうかも、この時点でワークプランをどの程度緻密に考えるかにかかっている。

10年以上コンサルティングに従事しているなかで、新卒、中途を問わず、コンサルタントとしてなかなか結果を出せず行き詰まってしまう人も見てきた。人によって理由はさまざまだが、ワークプランニングの能力が未熟、あるいはその重要性に気づかずに、いわゆる「悪循環」に陥ってしまうことが大きな原因の1つだと考えている。

コンサルティング・プロジェクトは通常チームで行われるが、チームで定めた期限に間に合うようにアウトプットを出すことが非常に重視される。ところが、うまくワークプランニングができていないと、想定どおりに進まず、夜遅くまで残っての作業が続いて効率が落ちてしまう、あるいは、アウトプットが目的に合致していない、ということが起こり、それをカバーするためにますます効率が落ちるという悪循環に陥るのである。焦ってやった仕事の質がますます低下することは想像できるだろう。読者の皆さんも、日々何らかの期限が設けられたなかで仕事をされているはずなので、それを前提にワークプランの考え方、立て方について述べていきたい。
作業レベルでのワークプランニング

コンサルティング・プロジェクトと同様、読者の皆さんもチームで業務を遂行する、あるいはサポートしてくれるスタッフの力を借りながら業務を進めるのが一般的だろう。その際には、月単位や週単位でやるべきことを定義するというだけではなく、1日単位に落として実行すべき業務のワークプランを考えることが重要である。月単位や週単位の計画だと、どうしても業務の項目ごとの計画になってしまうが、それを作業レベルの計画にまで落とし込むのである。 通常、コンサルティング・プロジェクトでは、プロジェクト全体の作業項目についてスケジュールを立ててクライアントに提案し、それをベースにプロジェクトが進められる。しかし、チームメンバーの個人個人にとっては、それだけでは不十分である。各チームメンバーが、日々何をするのかについて明確にしなければ、プロジェクトの完遂は不可能と言ってよい。どのような業務にも期限があるが、その期限がわかっていてもそれまでに質の高いアウトプットが出ないことがあるとすれば、その理由の1つは、個人レベルの日々のワークプランへの落とし込みが甘いからだと考えられる。 個人個人が日々の業務を実行するためにどのように時間を使えばよいかのヒントについては後述するが、ここでは、まずはチームとしてのアウトプットを最大化するために、あるいは個人レベルでのアウトプットの質を高めるために、読者の皆さんがどのように作業レベルのワークプランを考えるべきかについて考察したい。
ワークプラン作成の5つのステップ

1.目的を考え、目的に合った作業を洗い出す
2.作業ごとの重要度を評価する
3.作業ごとの緊急度を評価する
4.最適な役割分担を決める
5.ワークプランをアップデートする

業務には必ず「目的」がある。コンサルティング・プロジェクトで言えば、特定された課題の解決策の立案、仮説の検証等になるが、それらを実行するためにどのような作業が必要なのか、項目を洗い出し、実行プランを立てるわけだ。スタートポイントには常に目的があり、ワークプランの策定・実行・アップデート、どの段階においてもここに立ち戻って考えることが重要である。

若手のコンサルタントは、さまざまな情報の収集、データの分析、分析結果からの意味合いの抽出が主な仕事になるが、時々見られる現象として、やっていて面白い分析や作業に没頭して時間を使ってしまうということがある。本当にその作業は必要なのか、目的に照らしてどのような意味があるのかを見失ってしまうのである。

作業を行う際はもちろん、事前のプランニングの段階で、その「重要度」を評価しておくことが必要である。コンサルタントに限らず、経験を積んでいくとさまざまな作業内容を思いつくだろう。実行しているうちに新しく思いつく作業もあるだろう。そのときに「Must Have」なのか、「Nice to Have」なのかの判断をしなければならない。「Must Have」な作業は、その業務の目的を達成するために絶対に必要なもの、「Nice to Have」な作業は、あれば面白いが、なくても業務の目的は達成できるものと理解してもらえばよいだろう。目的を達成するために本当に必要なことに絞り込んだ上で、1 日単位のワークプランをつくろう。

「緊急度」も重要な視点である。緊急度を検討する際は、期限はもちろんのこと、その業務に他人がかかわるかどうか、実行がどの程度難しいかという視点が重要である。

どのようなことも自分以外の第三者がかかわると思うように事が運ばないことが多いため、他人がかかわる業務については慎重なプランニングが必要だ。

簡単な例として、ある企業に何らかの提案営業をすることを考えてみよう。必要となるステップは、顧客ニーズの検討、提案内容の作成、提案内容についての上司の承認、顧客への提案という流れだ。これをワークプランに落とす際には、顧客ニーズを把握するための情報収集、提案に必要なそのほかの情報の収集、提案内容の検討、提案内容のドキュメントへの落とし込み、上司とのアポ取り、上司による確認、顧客とのアポ取り、といった具体的な作業レベルに落とす。その際に、上司にはどのタイミングで提案内容を見てもらえるか、もし修正がかかった場合には修正する時間はあるか、顧客とのアポは通常どのタイミングで取れるかといった、第三者のスケジュールや都合を考慮した計画が求められる。ついつい、自分自身が手を動かす情報収集や提案内容の作成という作業に目が行きがちだが、リードタイムがかかるものは事前に周到に計画しておかなければならない。

自分やチームにとって難易度が高いと考えられる作業についても同様である。実行が容易なものであればある程度計算どおりに進むものだが、これまでにやったことがないなどの理由で難易度が高いものは、時間が想定以上にかかる可能性が高いし、チーム以外から専門家や上司のサポートが必要になることもあるだろう。これもあらかじめスケジュールに織り込んでおく必要がある。

重要度と緊急度を評価することで、チームあるいは個人単位で実行が必要な作業内容が決まり、スケジュールも決まってくる。このときに読者の皆さんにお願いしたいのは、これまでの経験をベースに、可能な限り想像力を働かせてほしいということである。実際にその1週間なり1カ月の作業を想像し、どこかで引っ掛かってしまい全体のスケジュールが遅れるような要素はないか、全体の進捗のボトルネックになるような作業がないか、最大限の想像力を働かせていただきたいのである。

前述のように、第三者がかかわるようなものが最も危ないが、それ以外にも実行が困難になる要素はないかを検証してほしい。もし自分の経験だけでは検証できないようであれば、上司や周囲の人の意見をもらってもよいだろう。繰り返しになるが、この段階でいかに考えておくかが、業務の質とスピードを担保するだけではなく、個人個人のクオリティ・オブ・ライフにかかわるということを肝に銘じていただければと思う。
自分の得意とする業務こそ部下に任せる

さて、重要度と緊急度という視点で業務を評価し、必要な業務についてスケジュールを立てていくわけだが、チーム内での役割分担、作業分担を検討する際に、非常に重要と考えていることがある。「自分の得意とする業務は、できるだけ自分でやらずに部下にやってもらうよう資源配分する」という視点である。この視点は、専門職として一定の仕事の質とスピードを究極まで上げることを目的としている職務の方は別として、一般的な業務分野でキャリアを積んでいこうとされている方に、特に重要と考えている。

通常、役割分担や時間配分を考えるときには、得意分野や得意な作業をメインに担当したり、つい慣れている作業を優先したりすることが多いだろう。しかしこれはキャリアアップという視点で見たときに必ずしも最適な資源配分とは言えない。これは、マーケティングや営業といった専門分野のことを言っているのではない。読者の皆さんそれぞれの専門分野や職種のなかで、日々の業務をどのように分担していくのかという際の考え方である。

私が「自分の得意業務はできるだけ部下にやってもらう」と言っている理由は3つある。1つ目は、通常自分が得意とする業務は部下もこれからやっていかなければいけない業務であり、会社や部門全体のスキルアップ、レベルアップのためには絶対必要だからだ。

また、部下に自分の得意分野を任せることで自分はより難易度の高い業務にチャレンジでき、スキルアップ、キャリアアップのベースとなろう。この2つ目のポイントが最も重要で、自分ができることだけをやっていては、キャリアアップは不可能であることは読者の皆さんが認識しているとおりだろう。短期的に見ると非効率のような気がするが、自分自身、あるいは会社全体で見ても必要な取り組みだと思う。

3つ目の理由は、自分の得意分野であれば、仮に部下の作業効率が悪かったり、アウトプットの質が低かったりしても指導やリカバリーが容易であるということだ。全体として見てもリスクは低いと考えるべきである。チームや自分のアウトプットの質を維持しながらスキルアップ、キャリアアップもしていくというバランスを考えて資源を配分する上で、1つの考え方として参考にしていただければと思う。
忘れがちなワークプランのアップデート

ワークプランについて、最後に重要なのは、アップデートするということである。コンサルタントにも時々いるが、最初にワークプランをつくったままアップデートをしないと有効性は半減する。業務自体の進捗によって変更するということもあるが、日々環境が変化しているなかで、これまで述べてきた視点をベースにアップデートすることは必須である。コンサルティング・プロジェクトでもよくあることだが、ある仮説を検証するためのワークプランを立てていたが、作業が進捗するにつれてその仮説が成り立たないことが見えてきて、新たな仮説が出てくることがある。その際に古いワークプランに基づいて作業を進めてしまっては、まったく目的に整合しない作業をすることになってしまう。作業が計画どおりに進んでいないときはもちろん、業務の目的が変化したとき、その他の要因も含めて必要に応じてワークプランをアップデートしていかなくてはならない。可能であれば日々アップデートしていただきたいと思う。
日々の時間の使い方

さて、ここまではチームとしてあるいは個人として日々何をどのように実行していくべきかという視点でワークプランの重要性、ワークプランの考え方について解説してきた。最後に、読者の皆さんの日々の時間の使い方について考えてみたい。

読者の皆さんは、通勤電車のなかで何をしているだろうか。本や新聞を読んでいる方もいるだろうし、座って通勤できるならたまった疲労を回復するために、睡眠を取っている方もいるだろう。

私は、読者の皆さんの生産性向上、クオリティ・オブ・ライフ向上のためにも、会社に向かう電車のなかで、その日1日のワークプランを考えることをお勧めしたい。その日にやらなければいけないことを考え、1日のプランニングをするのである。頭のなかで考えても、紙に落としてもよい。その際には、ここまでに述べてきたワークプラン作成のステップならびにポイントを思い出していただきたい。1つひとつの業務が、目的に照らして重要かどうか、業務の難しさ、第三者が関係するかどうかを勘案し、何から取り掛かるべきか。このような視点でやるべきことを評価すれば、おのずと優先順位、時間の使い方が決まってくるだろう。

時間配分という意味での資源配分も重要である。やりやすい仕事から取り組むのがよいか、難しい仕事から先にめどをつけるべきか。ミーティングとミーティングの間の細切れ時間をどう使うかの判断も重要だろう。

そして、1日が終わった後、今度はその日の時間の使い方が最適だったか、ワークプランニングの視点で考えたときにどのような改善が可能かを考えながら家路につくということも有効だろう。気づいたポイントをメモに取り、翌日からの時間の使い方に生かす。あるいは、1日を振り返ってみると、実は目的を達成するために必要になる新たな作業内容があることに気づくこともあるだろう。私は、夜寝るときにベッドのなかで考え事をする習慣があり、思いついたさまざまなことをベッドサイドのメモに書き込んでいる。翌日それを見ながら、チームあるいは自分自身のワークプランをアップデートしていっている。

本稿で解説したポイントに留意しながら適切なワークプランを回し、日々改善していくことがもたらすものは、業務効率の改善やアウトプットの質の向上だけではない。自身のキャリアアップのために、また、ライフスタイルを充実させる上で、とても意味のあることだと信じている。少しでも読者の皆さんのお役に立てるならば幸いである。

#061 コンサルタントの洞察力:本質を見抜き、課題を解決する「七つ道具」

A.T. カーニー Webサイトより

 

「洞察力」の定義と課題解決の七つ道具

「自分と同じ情報しか持っていないのに、示唆に富んだ発言をする人」─周りにそんな人はいないだろうか?情報は、そこから本質を見いだして初めて価値を持つ。情報の本質こそが、課題を解決する判断・行動を導出するための材料たりうるからだ。この本質を見いだす力が「洞察力」である。

本稿では、まず課題解決プロセスを説明し、そのプロセスでどのように洞察すべきかを解説する。そして、洞察における思考方法を、七つ道具」として紹介しよう。

最後に事例を取り上げるので、実際の現場で「七つ道具」は具体的にどのように活用できるのか、ご自身の仕事と照らし合わせながら、お読みいただきたい。
課題解決プロセス

課題解決プロセスは「Ⅰ.現状の把握」「II.実現したい状態の明確化」「III.打ち手の策定」の3つから構成される。IとIIの間に立ちはだかるハードルが「課題」だ。

「I.現状の把握」では、社内外の客観情報を取得・整理し、現状の姿を浮き彫りにする。「II.実現したい状態の明確化」では、客観情報のみならず、企業としての想い(ミッションや企業理念など)といった主観情報も加味する。ここでは、実現したい状態を明確化すると同時に、「現状」と「実現したい状態」の間のハードルである「課題」も明確化する。

最後の「III.打ち手の策定」では、課題解決のための判断や行動(=打ち手)を策定する。ここでも主観的な情報を織り込む必要がある。仮に同じ課題、同じ経営資源を持った企業であっても、経営理念が異なれば、最良の打ち手も変わってくるからだ。
洞察のプロセス

洞察は「整理整頓」 抽出」 示唆化」で構成され、課題解決プロセスの段階ごとに、洞察の仕方は異なる。

現状の把握
i.「整理整頓」:情報の収集・取捨選択・補完を意味する。客観情報を収集した後、フレームワークなどを活用し情報を整理する。その過程で、不足情報は追加収集もしくは類推することで補完する。また、不要な情報や疑わしい情報が出てきた場合は排除する。
ii.「抽出」:情報を構造化した上で、「要は何か?」を抽出する。情報から「要するに現状はどういった状態なのか」を抽出しなければ、課題を解決する上で意味をなさない。
iii.「示唆化」:「抽出」段階で得られた「要は何か?」を、企業(または個人)にとっての提言に昇華する。例えば、 抽出」により、 市場は縮小しており、縮小傾向は今後も継続する」というメッセージが得られたとしても、このままでは「だから何なの?」と言われかねない。意味のあるメッセージとは、例えば「市場寡占化が進むため、今がシェア向上の絶好の機会だ」のように、主体に対する示唆に富んだものでなくてはならない。

実現したい状態の明確化
i.「整理整頓」:現状把握のように客観情報を整理するだけでなく、主観情報の優先順位づけも行う。 実現したい状態の明確化」では主観情報を加味するが、一方で、想いをすべて加味してしまうと、その主体にとっての常識から抜け出せない。それゆえ、主体にとってどの想いが重要なのか、優先順位をつける必要がある。
ii.「抽出」:客観的情報を用いて、仮説的構造を抽出する。仮説的構造とは、客観情報に基づいた将来の社会・業界構造に関する仮説のことを指す。例えば、顧客のニーズがどう変化していくか、などを高い蓋然性をもって推測したもののことである。
iii.「示唆化」:客観的情報から得られた仮説的構造を踏まえながら、主観情報を組み合わせ、企業(や個人)の実現したい状態を明確化する。

打ち手の策定
i.「整理整頓」:まずは、制約条件がないという前提で、打ち手のオプションを洗い出す。そしてそのオプションを整理、つまり構造化する。
ii.「抽出」:真の制約条件を抽出する。社内の人材不足、企業理念との相反など、さまざまな制約が考えられるが、これらが本当に制約条件たりうるのか、見極めていく。
iii.「示唆化」:「整理整頓」した制約条件をもとに評価軸を設定した上で、評価軸に優先順位をつけ、オプションを評価する。評価を通じて、とるべき判断や行動を選択する。経営課題に対する唯一解は存在せず、主観的判断を交えながら評価・決定した結果が最終的な解となる。

以上が、課題解決プロセスに沿った「洞察」の全容である。そして、より適切に洞察するために、このすべてのプロセスにおいて駆使すべき思考方法=「七つ道具」を紹介しよう。
洞察のための「七つ道具」

①レンズ:視点を変化させて考える
レンズを通すと普段と違う風景を見ることができるように、様々な視点からモノゴトを考えることが1つ目の道具である。具体的には「全体観を捉える/部分に着目する」軸を設定し視点を移動させる」「言い換えてみる/置き換えてみる」の3つの方法がある。
「全体観を捉える/部分に着目する」は、議論中に「全体のうち、Aに絞り込んで議論を進めると…」今議論しているAを全体から見ると…」といった考え方をすることを指す。もし全体観を捉えないと、本来議論すべき論点から外れたり、議論内容が漠然としたまま深まらなかったりする危険がある。
「軸を設定し視点を移動させる」ことは、発想の転換に有用である。具体的には、一般的に議論の前提であり、議論の対象となりにくい時間軸(短期視点/中長期視点など)や空間軸(企業視点/社会視点など)を変化させて考えてみることだ。当社への影響は…」今年の売上への影響は…」ではなく、「10年後の社会への影響は…」グローバルへの影響は…」と時間軸や空間軸における検討範囲を広げると、考えを深めることができる。
設定する軸は時間軸や空間軸以外もある。例えば、商品の適正価格を議論する際に、あえて「カテゴリ内で最高価格を設定したらどうなるか…」といった考え方をすることも有用である。そうすることで、現状よりもよくなる点や、逆に悪くなる点が明確になり、議論に深みが出る。この例では価格の高低を軸にとって視点を移動させて考えているわけだ。
「言い換えてみる/置き換えてみる」ことは、対象を単語や一文で言い換えることを意味する。例えば、会社という組織を、人間の体に例えてみるとどうだろう」と発想してみる。対象を、あらかじめよく知っているものに置き換えて考える過程で、対象の様々な側面にスポットをあてると、対象の本質を抽出することにつながる。
日本企業においては、上司と違う意見を言いにくかったり「日本にとって…」のような高い視点の議論が敬遠されがちだったりする。その結果、会議が始まるときにはすでに視点が固定されており、新たな視点が出てくることは少ない。レンズを使いこなすためには実際に様々な視点から物事を捉えてみる癖をつけるとよいだろう。

②ものさし:立場を変えて考える
人はそれぞれ、考えるときや判断するときの“尺度”を持っている。そこで、自分自身のものさしを一旦外し、各人の尺度に沿って考えることが、立場を変えて考える」ことになる。
同じ企業でも、立場などによって思考回路は異なる。ブランド損益に責任を負っている部署にとって、宣伝費の削減は、損益改善のために必要な手段の1つだが、宣伝部から見ると、予算を削られる悪手に映る。例えば、あなたがきちんと情報収集をして社内で提案をしても、いつも関連部署が動いてくれないとすれば、関連部署の立場でモノゴトを考えられていない可能性がある。
立場を変えて考えるためには、自分の立場を一度忘れることだ。私は消費者視点に立って考えている」という人も、よくよく聞くと「うちは××部が強いから○○できない」や「××はコスト高で利益が圧迫されるからできない」など、消費者よりも自社の都合を優先していることが多い。
ただし、立場を変えて考える」ことと、「相手に迎合して考える」こととはまったく異なる。「A部長は…が嫌いだから、本来…すべきだけどやめておこう」という思考ではない。

蛍光ペン:同じ真善美で考える
これは、判断・行動を行う人物の「感情を理解する」ことを指す。道具で例えるなら、各人の心に引っかかる部分をチェックする蛍光ペンのようなものだ。ものさしが他者の論理を推し量る道具なのに対し、蛍光ペンは他者の感情の機微に気づき、心に留めておくための道具で、ものさしを使って得られた情報に蛍光ペンで線を引く、というイメージだ。
この道具が重要な理由は、他者の感情(=真善美)を理解しないまま、論理のみに根ざして判断・行動をすると、判断・行動する人物が“感情的に否定”してしまう場合があるからだ。前述の宣伝費の例で、 論理的”には、宣伝部は宣伝費削減に対して否定的だと考えられる。しかし、実際には過剰な宣伝費に問題意識を持っている人もいる。問題意識を持っている人に、わざわざ「宣伝費が過剰」と提言しても意味がない。むしろ無用な反発を招き、得られたであろう協力が得られなくなってしまうこともある。
論理的に正しい洞察が、必ずしも納得感のあるものとは限らない。論理と感情を重ね合わせて導き出すことが、本当の洞察だといえる。

④フォルダ:構造化して考える
この道具は、パソコン上でフォルダを整理するように、 構造化して考える」ことだ。具体的にいうと「事象をMECEに考える」「因果関係を明確にして事象を階層化する」ビジュアルで捉える」の3つがある。
構造化して考えないと、自分自身の思考を整理しづらいだけでなく、第三者と議論する場合にも共通の土台がない状態に陥る。
まず「事象をMECEに考える」とは、情報を「漏れなく、重複なく」整理するということだ。この用語は広く認知されているのだが、実際にMECEに思考できている人は少ない。例えばマーケティング会議で、自社ブランドの強みや成功した場合の売上予測ばかりを記載している企画書が散見される。MECEという思考方法を念頭に置いておけば、競合ブランドや市場の動向など、情報に漏れがあることはすぐ分かる。
次に、 因果関係を明確にして事象を階層化する」とは、事象を要素に分け、それぞれの因果関係を明確に論理展開し、結論に至る過程を階層構造化して捉えることだ。
「『最近味が落ちた』といわれていたラーメン店がいよいよ廃業してしまった」という例で考えてみよう。多くの人は、 味が落ちた→人気が落ちた→売上が落ちた→資金繰りが立ち行かなくなり廃業 =結論)」という因果関係を想像すると思う。しかし、これは短絡に過ぎる。まず、廃業の直接の原因は、資金繰りの悪化以外にも考えられる。たとえば、店主の個人的な事情で故郷に帰ることになったのかもしれないし、単にやる気がなくなった、他の業態に鞍替えしたというのが真相かもしれない。また、フランチャイズ本部との契約期限切れの可能性だってある。もし資金繰りの悪化が廃業の原因であったとしても、店の売上の減少以外にも可能性はある。本業以外の投資活動(例えば外国為替)で損失を被り、店の運転資金が費えたのかもしれない。仮に、売上の減少が資金繰り悪化の直接的な原因だったとしても、 味が落ちた」のが原因とは限らない。例えば、近所に強力な競合店ができてそちらに客を奪われた、平日の売上を支えていたランチ需要の源である近隣の企業が移転してしまった、などの可能性もある。このように「味が落ちた」という観測が直ちに廃業を説明する因子とはならない。 事象を正しく捉えるには、多数考えられる原因を1つずつ丹念に辿ってゆく思考過程が不可欠だ。事象の階層化は、これを要領よく行うための強力なツールである。
「ビジュアルで捉える」ことは、コミュニケーション時だけでなく、思考を深める際にも有意である。自分の考えを紙にまとめる過程で、不足している情報や、論理の飛躍などに気づくことができる。
「フォルダ」思考を使いこなせるようになるまでは、周囲に協力を仰ぐとよいだろう。情報を構造化したものを第三者にチェックしてもらったり、第三者のアイデアが構造化できているかをチェックしたりするのである。もし当てはまるハコがなかったり、逆に、当てはまるハコが複数存在したりする場合は、構造化できていないと判断できる。

⑤自由帳:真の制約を抽出して考える
罫線に囚われず絵をかける自由帳のように、既存制約を所与とせずに物事を捉えることが 5つ目の道具である。この道具は、特に「打ち手の策定」プロセスにおいて、見かけ上の制約を「真の制約」「対応策によりクリア可能な制約」 無関係な制約」に分類する上で活用できる。
「無関係な制約」とは、一見もっともらしく聞こえるものの、紐解いていくと実は打ち手とまったく関係がない制約のことである。例えば「我が社のプライドが許さないため、それはできない」などがそれにあたる。実際、 打ち手」に対して「できない理由」を挙げる人は多いものの、よく考えると「真の制約」でない場合が多い。
そして、この「対応策によりクリア可能な制約」と「無関係な制約」を除いたものが「真の制約」となる。
制約=所与という概念から抜け出すためには、制約を3つに分類する癖をつけておくことが重要である。それにより、ゼロベースで打ち手を検討でき、結果として、インパクトの高い施策立案が可能となる。

⑥メモ:直感を信じて考える
この道具は、メモに考えを書き留めておくように、 直感」を捨て置かずに論理的に検証することを指す。
ここでいう「直感」は、 仮説」とは似て非なるものである。「仮説」には含まれない“第六感から出てきた思いつき”こそが「直感」である。
「直感」は単なる思いつきなので正しくないのではないかと思われるかもしれない。しかしながら、示唆に富んだ発言をする人は「直感的には○○じゃないかな」「ドタ勘、○○「だと思う」違和感がある」といった言葉をよく使い、そういった「直感」を検証すると論理的にも正しいことが多い。
「直感」は個人の経験や情報を無意識に構造化した結果であり、 直感」の背景には確固としたファクトやロジックが存在すると考えるべきだ。「直感」を検証する癖をつけることで、洞察のスピードアップを図ることができる。

⑦ラベル:「要は何か?」を考える
「要は何か?」を考えるというのは、構造化した情報から“一言メッセージ”を抽出することであり、情報を整理したファイルに、中身をまとめた「ラベル」をつける作業に似ている。ラベルづけは、主体にとって意味を持つメッセージになっていることが重要で、?について」?の件」のように、テーマを漠然とまとめたものでは抽出が不十分といえる。
十分な情報を収集し、資料も大量に作って会議に臨んだにもかかわらず、参加者の表情が冴えず、ピンときていないようだし、質疑応答もまばら。こんな経験はないだろうか。その原因は、情報をまとめると“要は××”」が不明確なままだからである。
「要は何か?」というメッセージをきちんと抽出するためには、メッセージに必要な要素を、まず頭に入れておきたい。メッセージは原則として①「What?」、②「Why?」、③「How?」の3つの問いに対する答えで構成されている。
「What?」に対する答えは、…である」「…をすべきである」などのように言い切る、結論としての要素である。そして「Why?」は、「What?」の答えに至った論拠を「なぜならば…」と述べる部分だ。「What」と「Why」は支え合う関係にあり、「What?」の答えが「Why?」できちんと説明でき、「Why?」の答えと「What?」の答えが矛盾しない。そして、「How?」に対する答えとは、「What?」の答えが「…すべきである」など打ち手を提案するものの場合、その方法を述べる部分だ。ラベルという道具を使う際、抽出したメッセージがこれらの要素を満たしているか、自己チェックするとよいだろう。
この思考方法を身につけるには、地道に訓練を積むしかない。具体的には、情報収集のたびに「要は何がわかったのか」を考えるだけでなく、実際に文章に書き出してみる、あるいは、口に出して人に伝えてみることをお勧めする。当然であるが、要は××」というメッセージは、端的にまとまっていなくてはならない。「エレベータートーク」という言葉があるが、エレベーターに乗っているのと同じ30秒?1分程度の時間内に、メッセージを分かりやすく相手に伝えられるよう、言いたいことを要約するとよいだろう。逆に、説明するのに5分も10分もかかってしまうなら、メッセージをまとめきれていない。
おわりに

日々、日本の企業買収や企業戦略に携わっていると、将来的な少子高齢化の閉塞感、終わりのないコスト削減要求、過度なコンプライアンスへの業務流出、継続する投資抑制、グローバル化が難しい言語力など、課題山積にもかかわらず、それを克服するどころか逆にそういったトレンドに押されて、日本企業・ビジネスパーソンの活気がさらに下降しているように感じる。

ビジネスパーソンが、自分の仕事に使命と誇りと達成感を持つことが経済活性化への全ての第一歩。私は、1人1人のビジネスパーソンの「戦略的構造化」力が少しずつアップすれば、日本にある1つ1つの仕事の質とスピードが高まり、仕事に目的を持った活き活きとしたビジネスパーソンが急増し、社会全体でその歯車がかみ合い始めると日本経済の生態系は飛躍的に活性化し、明るく前進力のあるものになると思っている。

構造化力向上の第一歩は、自分が疑問を持たずにやっている日常の些細な仕事でよい。たとえば上司への顧客訪問事前資料、部長は何を知っておけば顧客との面談でうまくいくだろうか?」、また一方、「こうすればいいのに」などと思うものは「どうして自分はそう思うんだろう?」と考えてみる。「なぜだろう、なんなんだろう」ということの軸を構造化して押さえ、その上に「こうだからではないか(仮説)」を考える、というエクササイズをシツコクシツコクやってみることをおすすめする。

日本の需要・技術的優位性に依拠していた強みが低くなり、コスト競争力のない産業において日本の空洞化は不可避なのかもしれないが、ならば、世界で稼いで日本に儲けを還流する仕組み作りを考えなければならない。即ち、日本のビジネスパーソンの先を見通し行動する“頭脳”までが空洞化してしまうと、この国に明るい未来は絶対に来ない。ぜひ、皆さんのような高い志を持ったビジネスパーソンの方々が、戦略的構造化」力(=頭脳)を鍛え、明日から日本中に、感動的なお仕事と素敵な職場を1つでも多く増やしていっていただきたい。
 

#060 戦略的構造化スキル

A.T. カーニー Webサイトより

 

「戦略的構造化」力とは何か

筆者は現在、経営戦略コンサルタントとして、M&Aからオーガニックな成長まで、様々な企業戦略の立案・実行支援に携わっている。一見格好良く聞こえるかもしれないが、実際は、絶えず頭を高速回転させつつ、同時に脳みそに深く皺をよせて多面的にモノゴトを考え抜く、きわめてエネルギーのいる地道な仕事である。

この仕事の質を決める根本的な能力、即ち“私の仕事のコアエンジン”は、「モノゴト・課題を戦略的に構造化する力」だと考えている。とはいっても筆者は、大学時代は体育会系主将として運動に明け暮れる日々で、社会人になる際には典型的な右脳系・感情系のビジネスパーソンで全く優秀な部類ではなかった。その後10年間の商社マン時代およびMBA留学時代を通して基本的な計数的・論理的なビジネススキルを身につけたが、依然自分を支える本質的なスキルセットは“情熱”であり続けた。情熱は基盤として絶対的な必要条件であるが、企業や仕事の課題を最もインパクトのある打ち手で解決するには「課題の戦略的な構造化」こそが肝になる─そう確信したのは戦略コンサルタントになってからだ。その確信から筆者は「構造化を生業とする人」として、自身を“ストラクチャリスト”として商標登録し、一コンサルタントである上にさらに“戦略のプロ”としての意識を高め、日々質の高い仕事を自身に課している。

読者の皆さんに「戦略的構造化」力の養成を訴えたいのは、実はこの能力が、企業の課題解決だけでなく、社会・文化・個人に至るあらゆる課題・事象に適用できるからだ。皆さんが、自身を取り囲む課題を、少しずつでも意識的に「構造化する」ことを心がけることで、より確実に前進する行動に結びつき、日々の仕事・プライベートに好循環が起こり、生活を劇的に面白く変化させることができる。

では、「戦略的構造化」とは何か。筆者はこれを「ある事象や課題を『意味のある軸』で分けて平面的・立体的に捉え、課題の因果関係を探り、鍵となるドライバー(要因)やパラメータ(根本要素)をあぶり出して、優先順位を付けること」と定義している。「意味のある軸」と書いたとおり、構造化して抽出するのは、限られたリソースを投下して施策を打つことができ、実際に変革が起こるドライバーやパラメータでなくてはならない。つまり、目指すのは、単にフレームワークを当てはめたりMECEに分けたりすることではなく、実際にインパクトを起こすための「戦略的」な構造化である。

企業戦略コンサルティングの現場で求められる構造化は、様々に影響しあうパラメータを立体的に捉える高度な技術を要するが、まずはその基本を押さえよう。基本的な軸は、数式、規模、種類、要因、新旧、時間、プロセス、地域、方角などのように、定量と定性(=性質の軸)」か「時間と空間(=つながりの軸)」に大別される。

それでは、基本編として、この中の2つの軸を例に取り、構造化の例を見ていこう。ここではまず、表面的に事実を押さえることの意味を掴んでいただきたい。

因果関係を探り、鍵となるドライバーやパラメータをあぶり出し、立体的に捉える。
モノゴトを戦略的に構造化するスキルは、戦略思考や仮説思考の根幹をなすスキルである。
それと同時に、仕事のストレスから自らを解き放ち、
ビジネスリーダーに欠かせない人間的魅力を身につけるパスポートでもある。
“ストラクチャリストR”が、戦略的構造化」のアプローチと魅力を存分に語る。
基本編① 数式で考える

Aさんは、残業の多い若手ビジネスパーソン。毎朝、疲れが残った体で7~8時発の電車に乗り、ぎゅうぎゅう詰めのラッシュの中、40分の道のりを通勤している。電車を降りて一言、「マジで何とかならないかな?このラッシュ」。

さあ、そこでこの課題「通勤ラッシュの解決策は何か?」を構造化してみよう。通勤ラッシュ(朝7~8時と仮定)は、次の不等式で定義して構造化できる。

【1両当たり輸送客数×1本当たり車両数×(7~8時)1時間当たり本数(頻度)×路線数】<【7~8時の乗客数】

この「<」を「=」もしくは「>」に変える施策が戦略的な打ち手になるが、ざっと思いつく打ち手の候補を入れて構造化する。このように構造化することで、モレなくダブりなく要素が抽出でき、時間軸で打ち手候補を整理できる。さらに、モレている打ち手候補を盛り込み、数値的な感覚とプラス面・マイナス面を考慮して実現可能性を仮説的に評価できれば、打ち手の優先順位を付けることができ、それなりの議論に耐えうる資料ができあがるだろう。
基本編② プロセスで考える

Bさんは、通販会社のイーコマース事業立ち上げのためにIT企業から転職してきた。ただ、社内会議では、通販事業しか知らない社員の人たちと言語・常識がかみ合わないため、各部門の協力を得られず苦労している。たしかに、自分も通販事業をよく知らない。であれば一度、みんなに教えてもらって通販事業の全体像を理解したい。そして、通販とイーコマースがどう違うのか、その違いがどのような収益構造の差となるのか(=イーコマースがいかに収益性がよいか)をみんなに理解してもらいたい。「でも、どうしたらいい?」。

課題は「通販事業とイーコマースの差を見るために、通販事業の全体像をどう整理すべきか?」だ。これは、単純な課題整理だ。収益構造、特にコスト構造を見るときは、事業の流れと活動をプロセスに沿って整理してみると、見える世界が広がる。考え方を示すために内容は一部省略・割愛したが、大プロセスと小プロセスに分けるとさらに効果的であることがわかる。これを完成させ、それをベースに各業務における工数・コストの差異などを議論すると有意義だろう。
「戦略的構造化」のプロセス

解決やアクションに結びつく「戦略的構造化」を行うには、基本編で見たような考え方を、さらに高度化させていくことになるが、そのプロセスは、インプット、ストラクチャリング、アウトプットという3つのステップを踏む。

この中で最も重要なのは、最初のステップのインプットの質、特に「聴く」質を上げることだ。「聴く」力を上げるには、高い質問力もさることながら、まずは、話されている内容を頭の中で初期構造化するための「聴き方」が最も重要になる。

参考までに、私が実践している聴き方を紹介しよう。あくまでもイメージだが、「構造化」モードにスイッチを切り替えたら、左脳に論理的思考、右脳に抽象的思考の「聴く脳」が瞬間起動する。一般的に、求められない限り論理的な話し方をする人は多くないので、大抵は右耳から聴き、左脳に話をぶつける。左脳では、聴いた内容を数式化したり、プロセスで考えたり、ドライバー(要因)で整理したりして、効果的な整理・解決軸を探り出すためのテストを高速で繰り返し行う。同時に右脳では、左脳で暫定的に選んだ軸候補に対して、その構成要素の定性事象(例:現象・特徴・理由・解決仮説案など)をマッチングさせるよう抽出していき、その組み合わせの中で、左右の脳で共鳴する軸が見つかれば(たとえば、Y=ax+by+cz+…という数式で分ける軸を左脳で選び、右脳でa、b、cの具体的内容が明確に当てはめられていく状態)、それをベースに初期的な構造化イメージをどんどん深掘りしていく。

もちろん、これは筆者の“頭の中のイメージ”で、科学的な裏づけは一切確認していない。大事なのは、「こうすれば自分の頭が速く回転し、かつ、深く思考できる」という自分なりの方法論を持っておくことだろう。

ぜひとも、構造化の道具立てとして、自分だけの「効果的な聴き方」を見つけてほしい。
おわりに

日々、日本の企業買収や企業戦略に携わっていると、将来的な少子高齢化の閉塞感、終わりのないコスト削減要求、過度なコンプライアンスへの業務流出、継続する投資抑制、グローバル化が難しい言語力など、課題山積にもかかわらず、それを克服するどころか逆にそういったトレンドに押されて、日本企業・ビジネスパーソンの活気がさらに下降しているように感じる。

ビジネスパーソンが、自分の仕事に使命と誇りと達成感を持つことが経済活性化への全ての第一歩。私は、1人1人のビジネスパーソンの「戦略的構造化」力が少しずつアップすれば、日本にある1つ1つの仕事の質とスピードが高まり、仕事に目的を持った活き活きとしたビジネスパーソンが急増し、社会全体でその歯車がかみ合い始めると日本経済の生態系は飛躍的に活性化し、明るく前進力のあるものになると思っている。

構造化力向上の第一歩は、自分が疑問を持たずにやっている日常の些細な仕事でよい。たとえば上司への顧客訪問事前資料、部長は何を知っておけば顧客との面談でうまくいくだろうか?」、また一方、「こうすればいいのに」などと思うものは「どうして自分はそう思うんだろう?」と考えてみる。「なぜだろう、なんなんだろう」ということの軸を構造化して押さえ、その上に「こうだからではないか(仮説)」を考える、というエクササイズをシツコクシツコクやってみることをおすすめする。

日本の需要・技術的優位性に依拠していた強みが低くなり、コスト競争力のない産業において日本の空洞化は不可避なのかもしれないが、ならば、世界で稼いで日本に儲けを還流する仕組み作りを考えなければならない。即ち、日本のビジネスパーソンの先を見通し行動する“頭脳”までが空洞化してしまうと、この国に明るい未来は絶対に来ない。ぜひ、皆さんのような高い志を持ったビジネスパーソンの方々が、戦略的構造化」力(=頭脳)を鍛え、明日から日本中に、感動的なお仕事と素敵な職場を1つでも多く増やしていっていただきたい。

#059 連想力

A.T. カーニー Webサイトより

 

「連想力」-クリエイティブな発想力を高める思考法A.T. カーニー 転職情報
A.T. カーニーコンサルタントがプロジェクトに従事する中で培った、問題解決への「仕事術」の一部をご紹介します。

連想力とは

クリエイティビティを発揮するには、感性や発想力など生まれ持った第六感的な何かが必要と感じている人が多いかもしれない。実際、天性の感性や発想力といったものを持ち合わせた稀有な人がいることは事実であるが、クリエイティブな人の思考法をよく見ると、もう1 つ大きな特徴があることがわかる。それは連想することが非常に早く、そしてうまいことである。

皆さんもご存じのとおり、連想とは1つの物事から何かしら関係性のある別の物事を発想することであり、ある種の思いつきの域を出ないように聞こえる。しかしながらクリエイティブな人は、意識的か無意識的かは別にしても、連想を非常に体系立てて活用している人が多い。筆者自身も経営コンサルティングという仕事を通し、クライアントの経営課題を解決するにあたり、より斬新な切り口を検討するときや、アウトオブボックスなアイデアを必要とするとき、客観的に課題を見つめるときなど、体系立てた連想を活用している。

体系立てた連想の魅力は、天性の才能にかかわらず努力することで誰にでも習得が可能であること、また明日からでも練習を開始できることである。連想を体系立てて活用できるようになると、日常の何気ない生活や趣味の時間などに、自らが仕事をするうえでのヒントが落ちていることに気がつく。そしてそうした物事から触発され、柔軟な発想力を身につけることができると考える。本誌の特集テーマであるクリエイティブシンキングの第一歩として、今回は体系立てた連想とそれを高めるコツを紹介していきたいと思う。
連想のパターン

体系立てた連想を行ううえで何よりも重要となってくるのは、連想にはパターンがあることを認識することである。連想と聞くと無秩序のように聞こえる人もいるかもしれないが、実は3つにパターン化することができる。1つ目は同じような業態特性を持った事象間での「業態連想」、2つ目は同じ目的を持った事象間での「目的連想」、3つ目は同じような環境に身を置いている事象間での「環境連想」である。この連想のパターンを意識し、日々練習を行っていくことが、連想力を使いこなす最短の道筋であると考える。以下ではこれら3つの連想パターンに関して、それぞれ事例を交えて、活用のイメージを掴んでいきたい。

パターン①:業態連想
業態連想とは、先に記したように同じような業態特性を持った事象間での連想である。例えば、読者の方々が30名ほどのメンバーの組織の長であると仮定して「組織マネジメント」という課題を考えてみよう。組織マネジメントには企画立案、役割分担、業務管理など多様なことが求められるが、日ごろの業務に埋没していると斬新な切り口で捉えることが非常に難しくなるのが常である。ここで、業態連想を活用して思考の切り口を発見してみたい。

業態連想のステップであるが、はじめに課題の業態分析を行い、次に同じような業態特性を持つ事象を連想し、最後にそこから示唆を得るというステップになる。まず、組織の長として置かれている業態特性を考えると、中規模組織であることに加え、企画、管理、事務など多様な能力を保有する社員を束ねる組織ということが見えてくる。次に、同じような業態特性を持つ他の事象の連想であるが、例えば、プロサッカーチームとその監督の役割は近しい事象である。ご存じのようにプロサッカーチームはフォワード、ミッドフィルダーディフェンダーゴールキーパーと多様な役割を担う総勢20?30名の選手から構成されており、欧州のトップリーグなどになると国籍もバラバラの集団である場合が多い。それを束ねる監督はまさに組織の長の責任が問われている。

具体的には、チームの目標設定、勝つための戦術選択、コーチや選手の役割分担、個々人の動機付けなど、学ぶことが非常に多い。例えば、戦術とは試合の勝ち方であるが、詳しく見てみると、攻撃の動き/守備の動き/攻守の切り替えの動き、ボールを持ったプレイヤーの動き/周辺プレイヤーの動き、ゴール前までのビルドアップの仕方/最後のゴールフィニッシュの仕方、など多様な切り口で議論されていることがわかる。自分たちより強く攻撃的なチームと戦う場合には、こうした多様な切り口を通して、「相手の良さをどのように消すか、相手の攻撃をいかにして寸断するか」や「数少ないチャンスをどう生かすか、そのために攻守の切り替えスピードや効率的なカウンターをいかに仕掛けるか」といったことを検討していくことになる。競合他社の攻勢に対する対抗策の企画・検討は、厳しい市場競争に直面している組織の長にとっては常に課題であり、こうした業態連想が新たな視点を提供してくれると考える。

また、監督、コーチ、キャプテンの役割分担も、組織マネジメント上に示唆深いと思われる。特に、サッカーチームでは必ず監督、コーチ以外に、選手を代表するフィールドキャプテンという存在を置いている。その役割は様々であるが、主に監督と選手間のブリッジ、選手たちの統率と牽引、フィールド内での状況判断などが重要な役割を占めている。管理側と執行側の関係と役割分担は、あらゆる組織における普遍的な課題であり、組織の長として業務管理を行う際の視点としても重要となってくることが多い。サッカーにおけるフィールドキャプテンの機能を今の組織で誰がそれを担っているのか、その役割が明確でない場合に誰を充てるとよいのかといったことを再考する切り口になる。


パターン②:目的連想
次に目的連想である。目的連想とは、一見全く違うアプローチに見えて、同じ目的を目指す事象間での連想である。例えば読者の方々が新商品開発の担当者であると仮定して「自然派食品あるいは消費財の新規開発」という課題を抱えているとしよう。食品や消費財の新商品開発の場合には、顧客のニーズ分析、業界のトレンド分析、競合他社との差別化、自社が過去に出してきた商品との差別化などの基礎的な分析がまずは求められるが、クリエイティブな方々はより柔軟な考え方で目的連想をしている場合が多い。こうした目的連想のステップを分解してみると、はじめに課題の目的を設定し、次に同じような目的を持った他の事象を連想し、最後にそこから示唆を得るというステップになる。

まず、今回のケースの目的を考えると、自然派というキーワードがあげられる。その背景には、食品を食する、あるいは消費財を活用することで、顧客がより健康になる、癒されるといった目的が隠れていることがわかる。次に、同じような目的を持つ他の事象の連想であるが、健康や癒しというキーワードに着目して、色々な前提条件を取り払うと非常に多岐にわたり連想が可能になる。

例えば、旅行を癒しの目的で行う人が多い。あるいは音楽を聴くこと、植物を見ることなどを趣味として取り入れている人もいるであろう。さらにはヨガ、瞑想法、呼吸法などを健康や癒しのために取り入れている人は、企業の経営陣などにも多い。これらは、必ずしも食品や消費財と関係のないものではあるが、人を健康にする、あるいは癒しを与えるという共通の目的に対して異なるアプローチをとっている商品やサービスであり、そのアプローチや考え方などから柔軟な示唆を得ることが可能であると考えられる。

また、音楽や植物などを分析していくと、人が健康や癒しを感じる色(視覚)、匂い(嗅覚)、音色(聴覚)があることがわかってくる。健康や癒しというのは、五感全てで感じるものであり、そうした要素を食品や消費財などの新商品開発などに役立てていくことは可能であるし、実際そうした開発がなされているケースもある。また、呼吸法などからも示唆を得ることは可能である。呼吸法の生理学的な効果などは本稿では省かせていただくが、呼吸法の価値を分析してみると、1日1回自分を見つめる時間を作ること、呼吸を通して体のリズムを整えること、呼吸に集中することで日中忙しい頭を空にする瞬間を作ることなど多様な要素があることがわかる。こうした分析から浮かび上がってくる、自己を見つめる、体のリズムを整える、頭を空にするといったキーワードは、食品や消費財などの新商品開発などを検討していく際の切り口に活用することができると考える。


パターン③:環境連想
次に環境連想である。環境連想とは、同じような環境に身を置いている事象間での連想である。例えば昨今話題となっている「日本の外交戦略」という課題を考える際に、環境連想を活用してみたい。まず環境連想のステップであるが、はじめに課題の環境分析を行い、次に同じような環境下にある他の事象を連想し、最後にそこから示唆を得るというステップになる。環境連想は業態連想や目的連想以上に、最初の環境分析をきちんと行うことが大切であり、その分析自体もやや難易度が高いため、詳細に事例を記載してみたい。

まずは、日本の外交戦略が置かれている環境分析を行うと、いくつか大きな特徴があることがわかる。1つ目はグローバル化の進展による新世界の出現。1990年代から2000年代にかけて進展した市場、人材、資本などのグローバル化は、全く新しい世界を作り上げてきた。2つ目はBRICsと呼ばれて久しい新興大国の出現。特に地理的に近い中国とロシアの動向は外交情勢を緊迫させている。3つ目は日本社会の成熟。高度経済成長期、その後の経済停滞期を経て、今の日本は人口の減少と高齢化の進展に直面する一方で、経済や文化においては成熟を極めつつある。

次に、同じような環境下にある他の事象の連想であるが、例えば、中世ヨーロッパに栄えたヴェネチア共和国は非常に参考になると考えられる。ヴェネチア共和国は地中海貿易で1000年以上栄えた中世を代表する国家であるが、その後期に置かれた環境は今の日本に似ている点がある。新世界の出現という点では、当時はアメリカ大陸が発見されたことで様々なものがヨーロッパに輸入されるようになり、世界の中心が地中海から大西洋へとシフトした時代であった。新興大国の出現という意味では、当時のヨーロッパでは長年にわたる小国の争いが集結し、オスマントルコ帝国およびフランス帝国といった新興大国が出現しており、領土拡大や経済発展を戦略的に進めていた。そして社会の成熟という点では、地中海貿易の結果として、当時のヴェネチア共和国は複数の文化が織り交ざる稀有かつ高度な文化的発展を遂げていた。このように、今の日本と当時のヴェネチア共和国が抱えていた環境というのは、いくつかの点で非常に似ており、加えて両者が共に国際貿易により経済発展を遂げてきた経緯を踏まえると、その環境の類似性はさらに高まることがわかる。

示唆の導出となるヴェネチア共和国の外交戦略分析に関しては、多数の書籍などにも記載されているため本稿では割愛させていただくが、最終的にヴェネチア共和国はナポレオン率いるフランス帝国によって占領され、その長い歴史を閉じることになる。当時のヴェネチア共和国がとった外交戦略を学ぶことは、今の日本の外交戦略にとって良い点・悪い点双方から学びが深いものと考えられる。

 

連想力を高めるコツ

①:連想の「格」を意識する
ここまで連想のパターン認識と体系化の方法を紹介してきたが、より筋の良い連想を行ううえで肝として押さえておくべきなのが、連想をする際に「格」を意識することである。例えば、業態連想の項で扱った組織マネジメントの場合は、組織の大きさが1つの「格」である。30名の組織課題を考える際に、家族などの小さな組織から連想することも可能であるが、人数の違いによる相違が必ず出てしまう。同様に環境連想で扱った日本の外交戦略では、国家という規模感や責任の大きさが1つの「格」であると考えられるため、歴史上の国家あるいは同等の「格」を持つグローバル企業などが連想先として筋の良いものになると思われる。

仮に「格」が違う事象間での連想を行ったとしても良いアイデアや発想を見出すことができることもあるが、「格」を揃えるということは安定して筋の良い連想を行ううえでの前提条件であると考えられる。加えて、副産物的には連想をもとに考えた自らのアイデアや切り口などを他人に説明する際、あるいはプレゼンテーションする際に、信用力としてアイデアを支えてくれるという側面もある。


②:ミーハー+オタクで「T字」に情報収集する
加えて、連想力を高めるためには、その源となりうる情報(知識や経験)をデータベースとして蓄積させていくことも重要である。その際、自らのデータベースが「T字」となるよう心がけることが大切である。

「T字」というのは、ミーハー的に様々な情報に興味を持つこと(T字の)と、オタク的に深く知っている分野を作ること(T字の)をあわせて行うことである。広さと深さのどちらかに偏ってしまうのではなく、それぞれを意識して自分自身の中にデータベースを構築していくことが重要である。

T字のを収集していく活動としては、様々な本やニュースに目を通すといった方法以外にも、異業種の人たちと交流する、色々な国を訪れる、余暇を充実させるなど好奇心旺盛に新しい物事を探していくことが重要である。この際、読者の方々にぜひ意識していただきたいのが、知識を増やすのではなく体験や経験を増やすことである。体験や経験というものは知識と違い無意識の中にも残るものであり、体が覚えているものである。連想法の究極の姿もまた、無意識から筋の良い連想ができることにあると考えると、無意識の中にどれだけの情報を持てるかが重要になってくると筆者は考えている。

他方、T字のに関しては、趣味や生活など何でもよいので仕事以外にもう1つ打ち込む世界を作ることが大切である。欲を言えば、歴史の長さがあるものや関わる人が多いテーマに打ち込めるとより良いと考える。なぜならば、そのようなテーマは取得可能な情報量が多く、多くの議論がなされているため、結果として深みのある世界を体験することができる可能性が高いからである。筆者の場合は前述のヴェネチア共和国やローマ帝国などヨーロッパの文明史に非常に興味を持っており、時代背景、成功と衰退の歴史、皇帝のリーダーシップ、多文化/多宗教を束ねる統治体制、戦場における主導権確保など色々な角度から本を読み、人と話し、遺跡を見てきた。こうした知見は日々の経営課題解決の場においても連想しやすく、新たな発想の着眼点にも役立っている。


③:今日から始める
3つ目のコツは、今日から始めてみることである。例えば、今日読んだニュース、立ち読みした雑誌、閲覧していたサイトなどから、何でもいいので1つ自分の仕事への示唆を見出してみよう。そして数日かけて、業態連想、目的連想、環境連想を一通りやってみていただきたい。回数を重ねていくことで連想の感触を得ることができると思う。また、仕事やプライベートを通して出会った人との会話で、斬新な発想や鋭いアイデアなどに接する機会があったら、なぜそうした発想が出てきたのか、その背景にある連想を見つめてみる、あるいは議論してみることも大切である。
おわりに

今回は体系立てた連想とそれを高めるコツを紹介してきた。冒頭に記載したように、連想は天性の才能にかかわらず、努力することで誰でも習得が可能なものである。意識的に練習を重ねていくことで、連想力が身につき、いずれは無意識に連想を活用し、発想豊かなアイデアを導けるようになると思う。ぜひ今回ご紹介した連想力を皮切りに、クリエイティブシンキングを身につけていただきたいと思う。

#058 イヤイヤやっている行動を好きになれるように変える

すばらしいアイデアを出すためのシンプルなプランが存在します。もっと簡単なアプローチで何かを生むことはできるのです。

 

まずは2週間、「日々の生活の中で何が起きているか」に注目します。

 

 

①朝起きてから、通学や勉強をする中で、自分がやっているあらゆることに注目してみてください。

 

 

②それが済んだら、さらに2週間、「友人や親が何をしているか」を観察してください。

 

これで1カ月になりますね。そうしたら、その中で「いつもやっていること」「行動、活動、作業としてくりかえしていること」「やらなければならないと思いながらやっている嫌なこと」を考えるのです。

 

 

その行動を好きになれるように、あるいはやりたいと思えるように変えるのが鍵になります。

 

 

それこそが、偉大な製品、偉大な企業の源です。

 

 

そういったことを日々の生活の中で注目すると、すばらしいアイデアが生まれてきます。

 

 

あらゆることはもっとより良くすることができる、という発想につなげるのです。

 

 

世の中はもっとより良くしていくことができるし、それをするのは「誰か」ではなく「自分自身」なんだ。

 

 

それが、大切な人生の秘訣だと感じています。

 

Evernote 元CEOフィル・リービン氏

#057 大切な友人たちを大切にし続け、育むこと

人生にとって大切なことは、人数にかかわらず、「大切なことに一緒に取り組める大切な人たち」を持てるかです。

 

 

これからみなさんがあと20年、30年経つと企業のリーダー、時代のリーダーになることがあります。

 

 

だからこそ、いま出会った人たちを大切に、友人たちとの関係を磨いていってください。

 

 

そのように勤めていた会社や母校の友人たちとつながることで、僕はEvernoteをつくっていきました。

 

 
まわりがすばらしいからこそ、自分が走り続けなければいけないように仕向けるんです。

 

より簡単な道のりを選ぶのではなく、むしろ自分自身を大変な境遇においてみることが大事です。

 

Evernote 元CEOフィル・リービン氏

#056 自分よりも賢い人を周りにおくこと

まわりの人が自分より「面白い」「興味深い」「頭がいい」環境に自分を置いてください。

 

 

まわりがすばらしいからこそ、自分が走り続けなければいけないように仕向けるんです。

 

 

より簡単な道のりを選ぶのではなく、むしろ自分自身を大変な境遇においてみることが大事です。 

 

 

だから私はいま、自分よりも賢い人を雇うようにしています。

 

 

ここでいう「賢い」は、自分よりもすべてにおいて優れているという意味ではありません。

 

 

何かしら、1つの面でもそう感じられれば良いのです。

 

 

私は突出したスキルがあるわけではないけれど、あらゆる面で力が発揮できるジェネラリストだと思っています。

 

 

私の基本はプログラマーですが、だからこそ優秀な人に出会うと「あ、この人は優秀だな」とわかるので、その人を雇えるのです。

 

つまり、自分の実力やスキルをある程度わかっていれば、優秀な人を雇えるわけです。

 

 

だからこそ、その実力に気づくコミュニケーションの力、そして何か1つのスキルをまず身につけることが大切です。

 

 

Evernote 元CEOフィル・リービン氏